2013年の年明け早々、ダイヤトーンから新しいスピーカーが登場した。DS-G20。15万円のDS-G50と同じNCV振動板を使いながら、63,000円と大幅にリーズナブルな価格を付けたそのスピーカーの実力は?
「1月7日に新製品の資料が届くように手配しましたので、届いたらぜひ見てください」と、ダイヤトーンの広報担当O氏から連絡があったのは、昨年12月末。「何が出るの?」と聞いても「出てのお楽しみ」と教えてくれなかったおかげで「昨年のオートメッセで参考出品していたミッドレンジ? はたまたダイヤトーン・サウンド・ナビのプロセッサー部を使ったDA-PX1の弟分?」などといろいろ考え、もやもやした気持ちで過ごした正月だった。
DS-G50と同じNCV振動板採用の16cmセパレート2ウェイスピーカー
はたして1月7日に届いた封筒を開くと、資料に載っていたのはDS-G20というスピーカー。さっそく資料に目を通すと、振動板は15万円のDS-G50と同じNCV(ナノ・カーボナイズド・ハイベロシティ)。21世紀の新素材であるNCVを16cmウーファーと3cmトゥイーターの両方に使い、トゥイーターの振動板はドーム&コーン型というところまでDS-G50と同じである。もちろん、DS-G50では高価なネオジウムだったウーファーのマグネットは、一般的なフェライトに代わっているし、ウーファーのフレームはDS-G50のアルミダイキャスト製から樹脂製に変更されている。他にも、ネットワークが簡略化されたり、DS-G50には付属していたアルミダイキャスト製のダイレクターがDS-G20には付いていなかったり、細かい違いは多々ある。DS-G20。DS-G50と同じNCV振動板を採用 |
はじめに試聴室で試聴 |
では、なぜこれほどまでに価格を下げられたのかというと、無駄を減らす努力と、振動板の成形技術の進歩によるものだという。例えば振動板は射出成形といって型の中に中央から材料を一気に流し込み、固まったところで振動板の形にカットする。この行程において、振動板をより薄く成形できるようになったため、材料を減らせるのがひとつ。また素材の量と射出成形の圧力をコントロールすることで、カットして無駄になる部分の量を減らすことができた。このような、細かなコストダウンが積み重なって、大幅な価格ダウンが実現したのだ。
マグネットはφ104×15mmのフェライト |
音の立ち上がりの速さ、低音の締まりはDS-G50ゆずり
さて、もう一度試聴インプレッションに戻ろう。もっとも印象的なのは、軽快なレスポンスで弾力的に鳴る引き締まった低音だ。僕はベース・フェチといわれてもしようがないほど、ベースの音階がはっきりと聴こえないと気が済まないたちだが、このスピーカーを含めて、ダイヤトーンのGシリーズは、低音がダブつかずベースラインをクリアに再現してくれるのがいい。この低域がダブつかず、レスポンス良く鳴る感じは、なかなか他のスピーカーでは得られない。ウーファーの振動板。DS-G50とは若干カーブが異なる |
しかも車載状態では、車内音響特性の影響で低音は膨らむ傾向にあるため、イコライザーで補正する量が少なくてすむというわけ。なお試聴室ではDIATONE SOUND.NAVIの内蔵イコライザーで31.5Hz+3dB/40Hz+5.5dB/50Hz+5dB/63Hz+4dB/80Hz+3.5dB/100Hz+2.5dB/125Hz+2dB/160Hz+1dB/200Hz+0.5dBの補正を行っている。一般的にイコライザーは補正しても+3dBまでで、+5.5dBもブーストするのは考えられないのだが、ハイダンピング設計のGシリーズなら大丈夫。これくらい補正しても、制動の効いた立ち上がりの速い低音を再生してくれる。つまり、調整幅が広く使い勝手がいいということでもある。
樹脂製のHDフレームはまるで金属のように高い剛性を確保 |
マルチアンプ接続ではよりダイレクトにDS-G20の良さが伝わる
今回は、DS-G20付属クロスオーバー・ネットワークを使用してDIATONE SOUND.NAVIの内蔵アンプ2ch分で鳴らした状態、DS-G20の付属ネットワークを使わずDIATONE SOUND.NAVI(PREMIモデル)の内蔵クロスオーバーを使用し内蔵アンプ4ch分でマルチアンプ駆動した状態、DIATONE SOUND.NAVIの内蔵クロスオーバー&内蔵アンプを使用したマルチアンプ接続のシステムをマツダCX-5に車載した状態の3通りで試聴したわけだが、どの状態でも気持ちよく音楽を楽しむことができた。トゥイーターはドームコーン型 |
ギターの音などは、むしろ柔らかくなったような印象を受ける。もちろんピッキング時の音はスパッと立ち上がるのだが、その後に続く響きがナイロン弦独特の柔らかさ。付属ネットワークを使用した状態でも、色づけの無いナチュラルな音だと思っていたが、マルチアンプシステムのほうが、色づけの無さに磨きがかかったストレートな音だといえるだろう。それに伴い、音像の現れ方もより明確かつ立体的になったようだ。
デモカーでも試聴。同一振動板を使った良さが伝わる
デモカーはマツダCX-5 |
また、ドーム&コーン型トゥイーターが低域側を1.5kHzまで再生でき、ウーファーの高域側は8kHzまで再生可能という具合に両スピーカー・ユニットの再生範囲が広いため、ミッドレンジが無くても高域と低域がスムースにつながっている。これも音に一体感をもたらす要因のひとつといえよう。カーオーディオでは、ウーファーの低音とトゥイーターの高音がはっきり分かれて聴こえてしまい、音楽を楽しむどころではないケースも多々あるのだが、DS-G20ではまるでフルレンジスピーカーで鳴らしているような一体感のある音色で音楽再生が楽しめる。
トゥイーターはダッシュボード上の純正位置に |
低域はダブつきを感じない引き締まって躍動感に富んだもの。だから音楽が生き生きと楽しく聴こえる。再生レンジも十分で、最初はサブウーファーがあるのかと勘違いしたほどだ。エネルギーバランスも整っているし、中域、とくに声の自然さはダイヤトーンの伝統を受け継ぐもの。ヴォーカルものを聴くと、スケールの大きな音場の中にヴォーカルの音像が適度なサイズでぽっかりと浮かび、唄いかけてくる。まるでプライベート・ライヴを独り占めしているような贅沢な気分に浸ることができる。
いずれにせよ、これまで15万円のスピーカーでしか手に入らなかった音に限りなく近い音が63,000円で手に入るのは驚異的なコストパフォーマンスといえる。そして、このスピーカーを組み合わせて初めて、DIATONE SOUND.NAVIが持つポテンシャルをフルに発揮できる。良い音で音楽を楽しむのには、ある程度の出費は必要だが、これだけ音楽が楽しくなる音がカーナビ代+63,000円で叶うのなら、けっして惜しくないし、むしろお買い得といえる。
・クラブ・ダイヤトーン・2013年の幕開けにダイヤトーンから新スピーカー登場
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