【レビュー】ブラムSignature Multixを聴いた!

モレルの次はフランスのブラム。フォーカルのカーオーディオの責任者を務めたギー・ヴォンネビル氏が約5年前に立ち上げた、比較的新しいブランドです。

聴いたのは同ブランドのフラッグシップ・シリーズ「Signature Multix」の25mmピュア・マグネシウム・ドームツィーター、TSM25MG70HR(75,000円/税別・ペア)とマルチマグネットを採用した165mmウーファー、WS6Multix(150,000円/税別・ペア)を組み合わせたセパレート2ウェイシステム。基本的にマルチアンプ・システムでの使用を前提としており、パッシブ・クロスオーバーネットワークは用意されていないのですが、今回は一緒に送られてきた何かのクロスオーバーネットワークを利用して聴いています。


そのためか、なんとなくネットワーク部分がボトルネックとなっているような雰囲気もあったのですが、それでも魅力的な音がします。とにかくヴォーカルが生々しいのが魅力。フランスのスピーカーは、優しく囁くような歌声に魅力があると勝手に思っているのですが、このスピーカーはまさしくそんな感じ。という意味では、とてもフランスっぽいスピーカーです。グローバル化が進んだ最近では、お国柄が出るスピーカーは少なくなったのですが、コンセプトに「フレンチ・サウンド」を掲げているだけあって、フランス製っぽさが色濃い、今となってはとても貴重なスピーカーと言えます。

ただし、フォーカルなどフランスのスピーカーというと、低音がゆるくて膨らむ感じがどうしても許せなかったのですが(笑)、ブラムのスピーカーにはそれがありません。レスポンスがよく解像度もあります。その上で、厚く深い低音。このあたりはギー氏の好みなのでしょう。僕の好みともピッタリと合っていて、いろんな曲を長く聴き込んでしまいました。

ギー氏には、来日のたびに何度かお会いしましたが、とても音楽好き。しかも低音好き。このあたりは、僕と共通しているところがあります。フランスでのフォーカルのセミナーに出かけた時に、自分のクルマだったと思うのですが、サブウーファーがガンガン鳴っているクルマに乗せられ、大ボリュームで音楽を聴き「どうだ、いい音だろう」と自慢するものだから、ちょっとビビったのを思い出しました(笑)

ビビったといえば、ツィーターのプレートの色(笑)。ブラムはアラブの国々でも人気のようで、その好みに合わせてゴールドも用意しているのですが、今回試聴したモデルは、まさしくそれでした(笑)。これはちょっと…と思ったのですが、ブラックのプレートのバージョンもあるので安心してください。この外形は51mm。けっこう大きいので、ゴールドだと目立ちますからね(笑)。

ウーファーは複数のネオジウムマグネットを使ったマルチマグネット方式を採用。実は、この方式のウーファーにはあまり良いイメージが無くて、フォーカルの時も低域の一部の帯域だけ力が抜けるというか音圧が出ないような感覚だったんですよね。ところがブラムのこのスピーカーは全域で力があります。フォーカルで感じたネガティブなイメージはひとつもありません。低音好きな僕がいうんですから、間違いありません(笑)。

今回は2ウェイでの試聴でしたが、このシリーズには80mmのフルレンジというか、ミッドレンジ・スピーカーも用意されています。このスピーカーを加えて3ウェイで聴けば、もっと中域が充実するんだとは思うのですが、ツィーターの再生範囲が1.18〜43kHzと広いため2ウェイでも十分に中域に厚みのある音が楽しめます。

その前に試聴したモレルなんかは、2ウェイと3ウェイでは明らかに中域の情報量に違いがあって、圧倒的に3ウェイのほうがよかったのですが、ブラムの場合は2ウェイでも十分に厚みのある声で情報量も十分。もちろん、3ウェイにすれば一段と良くなることは間違いないとは思いますが、2ウェイでも十分に満足できる音です。ならば、むしろ取り付けや調整が難しい3ウェイよりも、2ウェイを選ぶ手はありです。

ギー氏が作ったフラッグシップ・モデルだし僕の好みにぴったり合っているということで、多少贔屓目に見ている感もあるかもしれませんが、それを抜きにしても良いスピーカーであることは確実。フランスを感じさせるし、音楽を表情豊かに聴かせるという点でも、優れたスピーカーに間違いありません。 ※追記 Webカタログを見たところ専用クロスオーバーネットワークの記載がなかったため「専用ネットワークはない」との趣旨の記載をしましたが、Signature Multix専用の2ウェイ・クロスオーバーネットワークは45,000円(税別)で用意されているとのこと。輸入代理店から連絡がありました。