今時の市販デッキは、1万円台のリーズナブルなものでもUSBを装備し、iPod/iPhoneを接続して簡単に音楽が楽しめるものが多い。ところが、高級モデルになるほど、iPod/iPhoneの接続が難しくなってしまう。ホームオーディオならば、オンキヨーの
ND-S1や、ワディアの
iTransportのように、iPodからの信号をD/Aコンバーターやデジタルプロセッサー等にデジタル信号のまま伝送できるデジタルメディアトランスポートがあるが、高級システムではデジタルプロセッサーの導入が全盛のカーオーディオには、なぜかデジタルメディアトランスポートのような機器がなかったのだ。これまでは。
「これまでは」と言ったのは、やっとオーディオテクニカから
AT-DL3i(39,900円)が登場したからだ。これを使えば、直接はiPod/iPhoneの接続ができないオーディソンの
bit one(99,750円)とか、
BEWITHSTATE(2100,000円)、カロッツェリアXの
RS-P99X(262,500円)、ダイヤトーンの
DA-PX1(800,000円)といったデジタルプロセッサーとiPod/iPhoneの接続が可能になるのだ。
もちろん音声はデジタル伝送。デジタルプロセッサー側の高性能D/Aコンバーターで、デジタル信号をアナログ信号に戻すから、高精度のデジタル/アナログ変換ができるし、信号伝送中の信号ロスやノイズの飛び込みも無い。iPod/iPhoneの音楽を、高品位なサウンドで楽しむことができるわけだ。
AT-DL3iには、光と同軸のデジタル出力を装備。両方のデジタル入力を備えたデジタルプロセッサーなら、音を聞き比べてみると面白い。どちらを選ぶかは、ユーザーの好み次第だが、オーディソンbit oneと光ケーブルで繋いだときは、繊細で緻密なサウンド、それに比べると同軸ケーブルでは中域の厚みと音場の立体感が増した印象だった。もっとも、ケーブルによっても違いがあるだろう。これはオーディオテクニカのレグザットを使用して試聴した印象だ。またコンポジットの映像出力も備えていて、外部モニターにiPod/iPhone内のビデオ映像を出力することもできる。
iPod/iPhoneとの接続は片側がDockコネクタ、AT-DL3iに差し込む側が専用コネクタの付属ケーブルで。長さが2mだから、デジタルプロセッサーがトランクなどにある場合は、デジタルケーブル側で長さを調整すればいい。またTOS-LINKの光デジタル入力を備えているので、デジタル出力を持つCDプレーヤーの接続も可能だ。
すでにデジタルプロセッサーをお持ちの人がiPodの音楽も聴けるようにしたいというケースはもちろんのこと、もし純正デッキの交換が難しい、またはインテリアデザイン上、純正デッキを交換したくないが、iPodをいい音で聴けるようにしたいという人にもおすすめ。この場合、オーディソンbit one+AT-DL3iの組み合わせがリーズナブルだ。
bit oneはハイレベルインプット対応入力を備えているので、メインメディアをiPod/iPhoneにし、CDやラジオを聴く場合は多少、音質は落ちるが純正システムを利用すればいい。もっとも、bit one+AT-DL3iのほかに、最低でも外部パワーアンプ&スピーカーが必要だから、システムを組むにはそれなりの予算は必要だが、iPodをいい音で楽しめるのは間違いない。
また、かつて販売されていたデジタル入力を持つCDヘッドユニットでもiPodを接続して音楽が楽しめるようになる。たとえばナカミチのCD-700とか、デノンのDCT-A1/A100といったモデルだ。これらのデッキとiPod/iPhoneを直接デジタル接続することはできないが、間にAT-DL3iを割り込ませれば、接続できるのだ。試しに、CDドライブが壊れて倉庫に眠っていたCD-700を引っ張りだして、AT-DL3i+iPodを繋いで聴いてみたら、なかなかいい音がする。AT-DL3iによって、過去の名機も甦るのだ。AT-DL3iは12月10日、発売予定だ。
オプションでリモコンを用意。デジタルボリュームを内蔵しているのでリモコンで音量調整が可能