オートサウンドWebグランプリのご報告

夏にMacの調子がおかしくなり、どうにか復旧したかとおもったら芸文社のムック本「誰にでもできるカーオーディオ調整法!!」の企画が持ち上がり、構成&取材&執筆で忙しくなり、ようやく終わったと思ったら、すかさずオートサウンドWebグランプリの選定が始まって、気付いたら4ヶ月近くも更新が滞ってしましました。ごめんなさい。

再開の1回目はオートサウンドWebグランプリの試聴で気になった機器を紹介しようと思います。2021年のグランプリ対象機器はコロナ禍もあって数が少なかったのですが、わりと粒揃いの機器が並んでいたのは確かです。もちろん、価格帯は様々だし中には一般の人が手を出しづらい高価なモデルもあるんですが、それぞれがハイファイ的な音、エンジニアの個性が感じられる音を出していました。

中でも驚いたのは、各社のAVナビが昨年モデルよりも大幅にクオリティアップしていたことです。例年は、まずAVナビを聴いた後にスピーカーを試聴し、スピーカーをリファレンス機に戻したあとでパワーアンプ類を聴くという順番で試聴しています。というのも、ある程度価格順に試聴しないと、途中でがっかりするものが出てきて、試聴に気合が入らないということが起きかねないからです。価格的にはパワーアンプに高価なものが多いため、最後に回しているわけですね。



ところが今回、作業の効率を考えてスピーカーの試聴を最初に行い、パワーアンプ、AVナビの順番に聴いたわけです。交換作業が面倒なスピーカーは体力のある最初に済ませて、交換がもっとも簡単なAVナビは最後にしたわけです。

当然、100万円超のモデルもあるパワーアンプの後に、AVナビのしかも内蔵アンプの音を聴くわけですから、急に音がランクダウンしてまともに試聴なんかできるのかな? と心配していました。ところが、わりとすんなり聴けるんです。もちろん100万円超のアンプと比べると、そりゃ同等というわけにはいきませんが、普通のユーザーなら十分といえるくらいの楽しい音がしているんです。

個々の機器についての詳細は次回以降に回しますが、今回グランプリ試聴に参加したカロッツェリア、ケンウッド、パナソニック・ストラーダ、そしてアルパインのどれを買ってもがっかりすることはないし、気持ちよく音楽を楽しめるでしょう。

はたして、このような急激なクオリティ向上はなぜ? と不思議に思ったのですが、おそらく2年前にアルパインが開発したパワーICを、今年は各社が搭載しはじめたようなんですね。もちろん、パワーICひとつで大幅にクオリティ・アップすることはないでしょうが、このパワーICの音質向上への貢献度は大きいものと思われます。そしてアルパインはさらにデジタル(D級)アンプに進化して、さらにクオリティ向上を果たしています。

AVナビの話は、今回はこれくらいにしておき、今回の試聴でもっとも気になったモデルといえば、なんといってもダイヤトーンのスピーカー、DS-G400です。このモデル、実は春先に発表されたものの緊急事態のせいで試聴もできなかったんですよね。



まあ、型番からみても偶数始まりの400番だから、それほど注目はしていませんでした。というのもダイヤトーンのスピーカーというと、DS-SA1やSA3、SA1000、G50にG50、G300と奇数の数字で始まるのが定番。G20というのもあり、それはそれで良かったのですが、ちょっと低音の鳴りが弱いなど中途半端な感じが拭えなかったのです。だから400という型番を聞いたときに、なんか中途半端なイメージがあって試聴する機会がなくても「まぁ、いいか」程度にしか思っていなかったんです。

が、今回初めて試聴してみて「なんでもっと早く試聴する機会を作らなかったんだろう」と後悔しました。このスピーカー、良い! 何が良いかって、音がとっても素直なんですね。ウーファーとツィーターの振動板が同じNCV-Rということで、当然といえば当然なんですが、音色に一体感があります。で、NCV-R自体が内部損失が大きく固有の音を持たないものだから、音が本当に素直。今回は試聴用に先日、スタジオで録音したての楽曲を用意したんですが、スタジオモニターで聴いた音、そのものの音がします。



レスポンスも抜群。NCV-R振動板はこれまで最上級のSA1000のウーファーにしか使われていないものだから、G300などに使われているNCV振動板と比べても伝搬速度に優れています。G500の伝搬速度が5,600m/s、G300が5,900m/sなのに対して、G400は6,300m/s。これは2000m/s程度の紙に比べても断然速く、5000m/s以下のマグネシウムとか5000m/s程度のチタン&アルミニウムと比べても優れた数値です。これがウーファー&ツィーター共に使われているのだから、レスポンスが優れているのもうなづけます。



解像度も高く、今回の試聴曲のなかでトリオのバラードには随所にアコースティックギターのおかずが散りばめられているのですが、普通のスピーカーではピアノの音に埋れて聴き逃してしまう部分もありました。が、ダイヤトーンのスピーカーではすべてのパートで、はっきりと聴き取れます。これがすべて聴き取れたのは、スピーカーではダイヤトーンくらい。それほど、個々の楽器が分離してはっきりと聴こえます。



そんなだから音像の定位も良好。ミキシングで指定した位置にはっきりと音像が浮かび上がります。他のスピーカーだと、こんなジャンルの曲にはぴったりだけど、この曲には合わないなとか、すごく魅力的だけど低音がもう少し欲しいなとか、この個性は好きだけど、嫌いな人もいるだろうなとか、一長一短のところがありましたが、ダイヤトーンのスピーカーはまさに真水。ダイヤトーンの信条である「なにも足さない、なにも引かない」をしっかりと形にしたスピーカーと言えるでしょう。

そんなだから、どんなジャンルの音楽でもソツなくこなします。それでいて優等生すぎてつまらない感じではなく、熱気も伝えてくれます。試聴に使った曲がレコーディング現場にいた曲だからこそ、そのへんはしっかりと伝わってきます。スタジオモニター的な正確な鳴り方をすると同時に、現場の熱さも伝えてくれるんです。これが、この値段で買えるんだったら、コストパフォーマンスは抜群に高いといえるんじゃないでしょうか。歴代Gシリーズ・スピーカーの中でも出色の出来の良さと言っても過言ではないと思います。