【レビュー】イートンCORE S-3を聴いた

試聴したスピーカーの新製品は、今回はこれが最後です。イートンの3ウェイ・システム、CORE-S3です。なんと左右ペアで70万円(税別)! 高いですね。まあダイヤトーンDS-SA1000は2ウェイで67万円(税別・ネットワーク付き)だし、最近高いスピーカーが多いので驚きはしませんが、やはり高いと感じます。


昨年のオートサウンドWebグランプリを受賞した2ウェイのCORE S2に8cmミッドレンジのCORE-80を加えて3ウェイ化したもので、ツィーターからウーファーまで、すべてのユニットは、マグネシウム振動板を採用。ツィーターはケロナイト加工を施し、マグネシウムの表面をセラミックに変えています。ミッドレンジとウーファーは、陽極酸化皮膜加工を施したマグネシウムで、センターキャップはシルク製。全ユニット、磁気回路にはネオジウムを採用しています。

高いから良いに決まっているという思いで試聴に臨みましたが、聴いた後は思っていたよりも良いという感想。実はこのスピーカーで音楽を聴いたのは2度目で、1度目は新潟・胎内スキー場でのイベントで岩手のサウンド・フリークスのデモカーに乗った時。このクルマはブラックスのDSP&アンプにイートンのCORE S-3を組み合わせて鳴らしていたのですが、今までクルマの中で聴いた音の中でも1、2位を争うほどの出来の良さでした。

その時は「ブラックスのDSPとアンプ、すげえ」と思っていたのですが、後でこのスピーカーを聴いてみると、このスピーカーだからこその、あの音だったんですね。とにかく自然な音。情報量も抜群で、音源の情報をすべて描き切ってくれる感じです。しかも、振動板素材が同じだから、それぞれのスピーカーが鳴っているような違和感がなく、一体感のある音です。紙のスピーカーのような自然でしなやかな音色。それでいて分解能は高いし、小音量で聴いても爆音で聴いても同じイメージで鳴ります。

またミッドレンジが加わったことでボーカル帯域が充実。本当にそこでしゃべっているような声に、ドキッとしました。さすが、ヨーロッパでもユニット・メーカーは数少なくなっているようですが、そんなメーカーが本気で作るとこうなるかという底力を感じます。

クロスオーバーネットワークがないので、マルチアンプ・システムで鳴らすことになりますが、このスピーカーを使う人のほとんどはDSPを使うでしょうから、そこは心配しなくていいでしょう。今回の試聴時は、あいにく編集部がDSPを設定ミスして、2チャンネルが鳴らない状態だったので、急遽、ツィーターをダイヤトーン・サウンド・ナビの内蔵アンプで鳴らし、ミッドレンジとウーファーをDSP経由でブラックス・アンプで鳴らすという変則的なシステム構成だったのですが、各ユニットのレベル合わせもままならない状態ながら良い音を奏でて、少しずつレベルを合わせていくうちにどんどん良くなっていくことが確認できました。機器側の調整に敏感に反応するあたりも、持ち味だと思います。

高いのでなかなか手は出ないだろうし、3ウェイだと取り付け場所を確保するのも大変。しかもツィーターとミッドレンジの角度も含めセッティングも重要だから、試聴室で聴いた音が簡単に出るとも思えませんが、チャレンジしがいのあるスピーカーだと思います。我こそはと思う人は、ぜひチャレンジを。