【調整】DIATONE SOUND.NAVIの調整のコツ、教えます

大阪オートメッセ2013のダイヤトーンのブースにあったスバル・インプレッサを視聴したなら「スピーカーが純正のままなのに、なんでこんなにいい音なんだ?」と驚いた人も多いと思う。それはDIATONE SOUND.NAVIのポテンシャルの高さによるものではあるが、それだけではあのような良い音にはならない。調整機能を使いこなして、しっかりと調整してこそ、あの音が実現する。その調整の仕方を、初心者にもわかりやすいように簡単に説明したい。


 iPhoneアプリのETANI RTA。無料。
まず最初に用意するものは何らかの測定器。RTA(リアルタイムアナライザー)があるといいのだが、調整のために買うには高価なものだから、ここではスマートフォンのアプリを使いたい。iPhone用なら音響用測定器メーカーのエタニ電機が出しているETANI RTAというアプリで十分に使えるし、有料のETANI RTA Pro(6,100円)なら、より高度な測定ができる。それともうひとつ必要なのが、測定用の信号を発生するもの。拙著、カーオーディオ・パーフェクト・セオリーブック2「サウンドチューニングMaster」に付属の調整用CDには、52トラック目にピンクノイズを収録しているので、これを活用してもらえるとうれしいのだが、iPhoneアプリでも標準信号発生器 Signal Generatorなんかが使える。ただし、測定信号の発生と測定を1台のiPhoneで行うことはできないので、iPhone/iPodは2台必要。1台しか持っていない場合は、誰か知り合いに手伝ってもらいたい。また、Android搭載スマートフォンにも同様のアプリはあると思うので、Androidの場合は検索して見つけてほしい。

まずはシステムに合わせて初期設定
これで何をするかといえば、もっとも重要なのはクロスオーバーネットワークの設定だ。デモカーとして使っていたインプレッサを例に挙げると、インプレッサのフロントスピーカーはセパレート2ウェイで、高音を再生するトゥイーターと、低音を再生するウーファーにわかれている。このとき、トゥイーターでは何Hz(ヘルツ)より高い高音を再生するか、ウーファーでは何Hzより低い低音を再生するかを調整するのがクロスオーバーネットワークの役割である。この調整がおろそかだと、後で詳しく説明するが、マルチウェイ・タイムアライメントの効果に大きく影響してくるので、ここはしっかりと調整しておきたい。
クロスオーバー設定がDIATONE SOUND.NAVI+純正スピーカーでいい音を楽しむキモ
さて、市販スピーカーなら、スペックを見るとクロスオーバー・ポイント(またはカットオフ周波数)が明記されているケースもあるので、この調整は比較的楽にできるのだが、純正スピーカーはわざわざスペックを明記しているわけではないので、調べるのが厄介。そこで登場するのが、先ほどのピンクノイズとスマートフォンのRTA測定アプリである。厳密に細かい周波数までわかるわけではないが、だいたい何ヘルツあたりがクロスオーバーポイントというのがわかれば調整しやすいのだ。

では、実際の測定方法を。これは、ナビをダイヤトーンに替えたあとよりも、ナビも純正のままのほうがわかりやすいので、カーナビをCIATONE SOUND.NAVIに交換する前の、まったくのノーマルの状態で測定しておくことをおすすめしたい。となると、信号の発生にiPhoneアプリは使えなさそうなのでカーオーディオ・パーフェクト・セオリーブック2「サウンドチューニングMaster」の付属CDを活用してもらいたい。

さて、測定用音源をCDにするとしよう。まず純正デッキではCD内のピンクノイズを再生する。そして測定用アプリを立ち上げたiPhoneをウーファーに近づけて測定を開始。これだけだ。できることなら、トゥイーターのグリルの上に何か音を遮るものを置くと、より数値が明確になるはずだ。音を遮るものは、クッションとかぬいぐるみとかでも大丈夫だ。
ウーファーにiPhoneのマイクを近づけて特性を測定
下のグラフは、カーナビをDIATONE SOUND.NAVIに交換したあとではあるが、iPhoneのマイクをドアのウーファーに近づけた状態で測定したもの。トゥイーターの音は遮らず、そのまま鳴らしているのでちょっとわかりづらいかもしれないが、薄い棒グラフを見ると5kHzから5kHzのところで、音圧がガクンと落ちているのがわかる。上の実線のグラフやピークの値なのであまり気にしなくてもいい。つまり、ウーファーが再生する範囲の上限は、4kHzあたりまでと考えていい。

こんな測定をマイクの方向を変えたりして何度か繰り返し、またトゥイーターにiPhoneを近づけた状態でも測定して、平均値をとっていけば、おおよそのクロスオーバー周波数は決まってくると思う。その数値を、DIATONE SOUND.NAVIのクロスオーバー設定に入力すればいい。その前にDIATONE SOUND.NAVIは、システムの初期設定が必要だから、そちらも忘れずに。インプレッサの場合、フロントスピーカーは2ウェイだから【パッシブ2Way】を選ぶが、DIATONE SOUND.NAVIを装着するクルマのスピーカー構成に合わせて設定すればいい。

次はマルチウェイ・タイムアライメントの設定。これは基本的に、リスナーを基準として右トゥイーター、右ウーファー、左トゥイーター、左ウーファーまでの距離を測ってインプットすればいい。最終的に微調整が必要なこともあるが、基本は実測値でいい。これで、それぞれのスピーカーとリスナーまでの距離の違いを補正でき、それぞれのスピーカーから出たおとが、同時にリスナーの耳に届くようになる。そのため、運転席等のピンポイントで、理想的なステレオ音場の再現が可能になる。
タイムアライメント設定の画面。実測値が基本。
ただ、マルチウェイ・タイムアライメントは、一般的なタイムアライメントとは異なる。一般的なタイムアライメントはマルチアンプシステムが基本。つまり右トゥイーターに1ch分のアンプ、右ウーファーに1ch分のアンプという具合に、スピーカーユニット1個に付きアンプ1ch分を使う。ところがマルチウェイ・タイムアライメントは、パッシブクロスオーバーネットワークを使用した状態でも、トゥイーターとウーファーの距離差を補正可能。一般的なタイムアライメントのようにチャンネルごとに時間軸の補正をするのではなく、先ほどクロスオーバーネットワークで調整した周波数によって時間軸の補正ができるからだ。

だから、クロスオーバーネットワークの調整は、マルチアンプシステムよりシビアになってくる。というのも、例えば純正のトゥイーターからは5kHzより高い周波数しか出ていないのに、クロスオーバーネットワークの設定が3kHzになっていれば、3kHzから5kHzの周波数は、ウーファーから出ることになる。ところが、3kHzより高い周波数の音はトゥイーターの距離に合わせて時間が補正されるわけだから、ウーファーから発せされる音のうち3kHzより低い音と3kHzより高い音に時間差が出るというおかしなことになってしまうわけ。だから、マルチウェイ・タイムアライメントにおいて、もっとも重要なのはクロスオーバーの設定。逆に、これがしっかりとできれば、調整は終わったも同然だ。もし、純正スピーカーのままDIATONE SOUND.NAVIを装着し、調整をしないでほったらかし状態の人がいたら、ぜひクロスオーバーとタイムアライメントの調整を行って欲しい。音は見違えるように良くなるはずだ。

DIATONE SOUND.NAVI
クラブ・ダイヤトーン