ガラパゴス・カーナビからの脱却を図るクラリオンのスマートアクセス

クラリオンが、まずは日本と北米で6月から展開する「スマートアクセス」。ちょっとわかりにくいので、説明しておく。



「スマートアクセス」とは、ひとことでいうとクラウド型のテレマティクスサービス。テレマティクスとはテレコミュニケーション+インフォマティクスの意味で、要するに通信を利用してクルマなどの移動体に情報を提供したり、クルマからの情報を受けたりするシステムだ。たとえばトヨタのG-BOOKやホンダのインターナビ、日産のカーウイングスなどもテレマティクス・サービスのひとつである。


これら従来のテレマティクスは、それぞれ独立したサービス。G-BOOKなら、G-BOOKのサーバーにある情報やサービスしか受けることができない。対してクラウド型は、クラウドにある情報やサービス同士がお互いに連携を取り合い、さまざまな情報やサービスを車内のユーザーに届けることができるというわけ。そのクラウドの情報やサービスを一括管理してクルマに提供する窓口となるのが、スマートアクセスというわけだ。

一例をあげると、ニュースの音声読み上げ。これはニュースを文字情報として提供しているサーバーとは別に、文字を音声に変換するサーバーが別にあり、これらがクラウド上で連携をとって、ドライバーに音声でニュースを伝えてくれる。カーナビに搭載した非力なコンピュータではなく、クラウド上の強力なコンピュータを使って情報を処理できるため、処理は高速かつ高精度。このあたりもクラウド型のメリット。それが、クラウドとスマートフォンの発展によって、簡単にできるようになったのだ。

それなら、スマートアクセスが無くても、直接スマートフォン・アプリが車内で使えればいいと思うかもしれないが、スマートアクセスを窓口に設けたのは、車内での使い勝手がいいように管理したり、ウイルスがクルマのコンピュータに侵入したりしないよう管理するなど、さまざまな意味を持つ。このスマートアクセスが介在することによって、ドライバーは安全かつ快適に、クラウドの情報&サービスを受けられるというわけだ。

またスマートアクセスは、スマートフォンのアプリだけではなく、リアルタイム交通情報や検索情報など、さまざまな情報を一括管理できる。さらに車両の情報をクラウドに送って、その情報を活用したサービスを受けることも可能だ。日産リーフでは常時通信により電費を管理したり最新の充電スポットをドライバーに提供したりといったことを行っているが、スマートアクセスでもそのようなサービスが実現する可能性があるのだ。

このようなサービスを実現するには、膨大なコストが必要だが、クラリオンはグループ企業である日立のグローバルデータセンターを活用してサービスを提供。おそらく、このような大がかりなシステムを提供できるのは、車載機器メーカーではほかにはないと思う。つまりクラリオンは、従来の車載機器を作るハード・メーカーから、テレマティクスの情報システムプロバイダーへど進化しようというわけ。

現在スマートアクセスで使えるアプリは限られている
クラリオンがこのようなシステムを開発したのは、グローバル型プラットフォームの構築のため。今の日本のカーナビは日本独自で進化していて、いわばガラパゴス状態。それを打ち破り、世界で使えるテレマティクスサービスを目指している。新ナビで使えるスマートアクセスのサービスはまだまだ限られているし、これまで提供してきたカージェットやカスタムボイスなどのサービスがまだスマートアクセスに統合されていないなど、現在は過渡的な状態にあるのだが、今後の進化に期待を持てるサービスである。

クラリオン


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