すべてが変わったアルパイン・ビッグXの凄さ

今日はアルパイン・ナビの個別試聴のため再び用賀へ。11型モニターを搭載したフローティング・ビッグX、EX11NXです。このモデルは一度、平面バッフルでも試聴しましたが、今回はアルパインがいわきから持ち込んだB&Wのホーム用スピーカーでの試聴です。


平面バッフルで聴いた時にも、ずいぶんアルパインの音は変わったなぁという印象でしたが、細かく説明を聞いてその理由がよくわかりました。ナビのプラットフォームだけではなく、オーディオ部分もまるっきり変わっているんです。

まずオーディオ好きにとって気になるのはハイレゾに対応しているかですが、もちろん対応しています。ハイレゾといえばダイナミックレンジが広くS/Nが良い、再生周波数帯域が広いというスペック上の利点が挙げられますが。それを超えてリスナーに感動を与えることをテーマに開発しています。

目指したのは、スタインウェイの音。ずいぶん大きく出た感じですがスタインウェイのピアノの音は余韻が長いというか音が消えるまでの時間が長いんですね。そこに注目して、ビッグXではノイズレベルまで続く倍音が打ち消されないように様々な工夫をしているんだそうです。

その一つがC.N.D.F回路を採用したデジタル・パワーアンプ。デジタル回路の周辺にはさまざまなノイズ成分が発生して、それが不協和音になっていますが、音楽に不必要なノイズを取り除くことで音階が蘇り、自然でアコのこない響きを奏でることができるんだそうです。

また同じくデジタル・パワーICに採用したP.S.F.I回路もそう。これはピタゴラスの定理に基づいた瞬時位相調整回路で、位相ズレによる不要な高調波を都に覗くことで基本波のみを再現できるそうです。

D.R.A.S.という、日本ケミコンとの協業で完成した高音質アルミ電解コンデンサも音にかなり効いています。30Gの圧力にも耐える高耐性で、小型ながら1900μFの大容量を実現。大音量で急激に負荷変動があっても過渡応答特性が良く素早く復帰するので、安定した電源供給が可能です。

またV.P.N.P方式のミルムコンデンサも高音質に貢献しています。不純物の無い真空環境でコンデンサを作ることに成功した世界初の技術で、不純部物も参加もゼロなため、オーディオ信号の通過を妨げることなく正確に伝えることができます。

さらにフーリエの熱拡散理論を応用したC.B.T.F構造という冷却システム。2つのファンによって空気を吸って排出しているんですが、熱効率の良いD級アンプを使用していることもあって、朝からけっこうな音量で試聴を繰り返しているというのに、午後になっても(僕は15時スタートでした)筐体は冷たいまま。そのおかげで、熱だれのような音への悪影響はないし、熱による経年変化も防げます。つまり長持ちしそうと言えます。

このように、ほぼすべてが変わったアルパイン・ビッグXは、従来モデルに比べて音が洗練された印象。以前のモデルにあった低域の勢いは減った感じですが、中域が充実して低音のピッチもクリアに再現してくれます。そして響きがいい。これは位相を徹底的に突き詰めたおかげでしょう。

平面バッフルで聴いた時は「あれっ? アルパインの音変わったなぁ」という印象でしたが、説明を受けながら改めて試聴すると、なるほど、そういうことだったのねという理解がどんどん深まるし、凄さが伝わってきます。一応、ラインアウトも別売で用意していますが、たぶん内蔵のデジタルアンプで再生するのが、ビッグXの良さをもっとも引き出せると思います。

ところで、旭化成の延岡工場火災の影響も尋ねてみました。やはり相当影響が大きいようで、旭化成は自動車メーカーへのパーツ供給を優先するため、市販メーカーへは後回しになる模様。少なくとも半年くらいはパーツが回ってこない恐れもあるそうで、アルパインの製品も、ショップ間で在庫の取り合いになっているようです。

つまりパーツの在庫が切れたら作れなくなるし、それが無くなったら欲しくても買えない状況になります。だから購入を検討している人は、早めに決断して在庫を見つけたらすぐに購入がいいでしょうね。ただ、転売ヤーから高値で出始めているという話も聞くので、そのへんは注意しながら購入するのがいいかと思います。