引き続きオートサウンドWebグランプリ2021について

引き続きオートサウンドWebグランプリについてお伝えしましょう。今年のグランプリは12月初旬に発表され、アルパイン・ビッグXの最新モデルがゴールド・アワードに選出されました。ビッグXは昨年もゴールド・アワードに輝いたと思いますが、確か僕を含めて数人は最高点3点のうち2点止まりだったと思います。ところが今年は全員が最高点の3点を入れています。文句なしの満点での選出です。


その理由は、さらに磨き上げた内蔵アンプの素晴らしさでしょう。昨年モデルも確かに、ホーム用のB&Wスピーカーを軽々とドライブしていて、内蔵アンプの良さは実感できました。しかしAVナビとしてトータルで考えるとネットにつながり様々なエンターテインメントを提供してくれるサイバーナビのほうがインパクトが大きいと感じたし、3点を与えるほどでもないな、と思ったわけです。

ところが今年は違います。昨年のグランプリが終わったあと、アルパインではさらなる高音質化を進めるべく徹底的に解析を行ったそうで、低音の音程がわずかにずれていることを突き止めたんだそうです。まさにピアノの調律のようなもので、その音程を整えたことの効果たるや絶大。音に芯がピーンと通った感じといいますか、安定感がまったく違います。微妙な音程の違いを正確に整えるだけで、ここまで音の安定感が違うのか! と審査員の皆さんが驚いたのだと思います。少なくとも僕はそうでした。そこで最高点の3点を入れたわけです。

僕が最高点の3点を入れたモデルは、他に2機種あります。ひとつは前回お伝えしたダイヤトーンのDS-G400、もうひとつはマイクロプレシジョンの7シリーズ・モノアンプです。これは単純に今年のエントリー・モデルの中からどれを付けたいかを考えたときにスピーカーならDS-G400、パワーアンプならマイクロプレシジョンだろうなぁと思ったわけです。もっともマイクロプレシジョンのモノアンプはペアで70万円超と、おいそれと買えるものではないので、お金を湯水のように使えるならという前提はつきますが(笑)

DS-G400は前回お伝えしたのでそちらを参考にしてもらうとして、マイクロプレシジョンのパワーアンプの音は、リアルさが他のモデルとはまったく違っていました。今回は、11月に発売されたカーオーディオパーフェクトセオリーブック5「誰にでもできるカーオーディオ調整法」に付属したCD内に収録している楽曲を2曲、試聴用に用意したんですが、スタジオのモニタースピーカーで何度も聴いた音にもっとも近い音がしていたのが、このマイクロプレシジョンのパワーアンプです。

試聴用の曲のひとつはピアノ、アコースティックギター、ヴォーカルのトリオで録ったバラードなんですが、これがわりと再生が難しくて、ところどころに入ったギターの短いフレーズがピアノの音に埋れてはっきり分離しないんですね。ところがマイクロプレシジョンのパワーアンプは、普通のオーディオ機器で聴くとピアノに紛れてうやむやに聴こえるギターの短いフレーズも、はっきりと浮き立って聴こえるんです。これがはっきりと聴こえたのはこのアンプとダイヤトーンのスピーカー、そしてアルパインのビッグX、カロッツェリアのサイバーナビくらいでした。

もう1曲はツインドラム、ツインキーボード、ベース、ギターのインストルメンタルなんですが、左右に振り分けたツインドラムの細かいドラミングもはっきりと聴こえて、なんだか音数が増えたように感じます。またキーボードの一人は、ドイツ製のモーグのシンセサイザーを使っていたんですが、この音色がすごく良かったんですね。スタジオでも「あのキーボード、めちゃ音がいいね」と話題になっていました。そのリッチな音の感じがはっきりと表れていたのは、マイクロプレシジョンのアンプだけだったんです。それほどリアル。スタジオのモニタースピーカーで聴いた時のような音がします。だからアンプ部門では最高得点を入れたわけです。

今回は全員の合計点が10点を超えたものがグランプリに選出されましたが、惜しくも選外となったものの中にも、個人的には惜しいなぁと思ったモデルも含まれています。ひとつは、やはりマイクロプレシジョンのスピーカー、7.16iです。これ、ウーファーがものすごく良いんですね。紙のように自然でレスポンスが良く、軽快な音がします。ツィーターがちょっと合わない感じなんですが、ネットワークが邪魔をしているのかもしれません。試したわけではないのですが、マルチアンプ・システムできっちりと調整すれば、ものすごい音が出る可能性は大いにありです。

もうひとつ2点を与えながら選外となったモデルが、ブラムのパワーアンプ、LA4100です。たぶん、どおってことのない音のアンプなんですが、このブランドの首領、ギー・ボンネビル氏が好きそうな音がするんです。この音には、思わずにこにこ笑ってしまいました。もうひとつ、ブラムでは5万8000円のお安いDSPアンプがあったんですが、これもやはりギーさんの顔が思い浮かぶんですね。この音の傾向の統一性は見事です。

その他に僕が2点以上を入れた機器は、すべてが10点以上を獲得してグランプリに輝いています。今年はエントリー台数が少なかったわりに、けっこう音の良いモデルが多くて、すべてにグランプリを与えてもいいのでは? と思ったほど。とくにAVアンプの音の向上ぶりはすごくて、内蔵アンプでこれだけ良い音を出していたら、外部アンプは困るだろうなぁと思ったほどです。とはいえ、マイクロプレシジョンのような高額だけど音が良いアンプもあるわけで、上には上があるということでしょうか。

いずれにせよ、今季はコロナ禍による半導体不足で製品の供給体制は不安定だし、価格が上がるという情報もポツポツと入ってきています。だから、欲しいものを店頭で見つけたときには迷わずに購入する。そんな姿勢で製品を探す心構えが正しいかもしれません。