audisonの新製品に続いて、今度はブラム。こちらもトライムが扱う製品です。同社の最上位スピーカー「シグネチャー」シリーズのなかのフラッグシップ・モデル、マルティックスがモデルチェンジしました。
ブラムといっても、カーオーディオ・ファンはともかく、一般にはあまり馴染み深くないかもしれません。最初の製品ができたのが2014〜2015年頃。創業して4〜5年のまだまだ若いブランドなので、無理もありません。
しかし、創業者のギー・ボンネヴィル氏の名前を聞くと、聞き覚えがある人も出てくるかと思います。そう、フォーカルでカーオーディオの責任者を務めたかたで、よく来日していたので、馴染みのあるかたもいると思います。そんなギー氏が、仲間とともにフォーカルを辞めて立ち上げたのがブラムというブランド。優秀なスピーカー・エンジニアも多数含まれていて、創業間もないとはいえ侮れないメーカーです。
第一弾の製品群の評判も上々でしたが「いつまでに出す」という時間的な制約があったため、最終的な煮詰めが甘くなったところもあったそうです。それでも、魅力的な音がするスピーカーを出していたのは「さすが」というところですが、今回は時間を気にしないで、音に納得するまで開発を続けたというから、期待ができます。
そのように、開発期間をじっくりかけて造りあげられたブラムのマルティックスですが、ウーファーが165mmユニットのWS 6 Multix(150,000円/ペア・税別)。ミッドレンジが80mm口径で、MS 3 Multix(105,000円/ペア・税別)。ツィーターが3種類あり、一番高いものからTSM 25 MG 70HR(75,000円/ペア・税別)、TSM 27 MG 45(60,000円/ペア・税別)、TSM 25 S 45(48,000円/ペア・税別)の3モデルです。
ツィーターは、上位2モデルがピュア・マグネシウムの25mmドーム型振動板を採用。TSM 25 S 45はTSM 27 MG 45とまったく同じサイズですが、ソフトドームを採用しています。上位2モデルの違いは、TSM 25 MG 70HRが外径が大きく(51mm)その代わりに薄型(12mm)。大してTSM 27 MG 45は取り付け口径が40.8mmと小さく、奥行きが14.5mmと長くなっています。
同じピュア・マグネシウム振動板を使いながら、再生周波数も大きく違っていて、TSM 25 MG 70HRは1.18〜43kHzとワイドレンジ。対してTSM 27 MG 45は1.2〜23kHzです。だからスペック上でもハイレゾ再生を極めたいならTSM 25 MG 70HRが有利。取り付け性で選ぶならTSM 27 MG 45という感じでしょうか。ちなみにTSM 25 S 45はサイズがTSM 27 MG 45と同じで、再生周波数帯域は1.58〜30kHzです。これのみ、近日発売予定となっていて、まだ発売していません。
ミッドレンジとウーファーは、マルティックスのネーミングの元となっている磁気回路が特徴的。複数のスティック上のネオジウム・マグネットを並べた磁気回路が強力に駆動してパワフルなサウンドを繰り出します。同時に自然。フォーカルのマルチ・マグネットとそっくりだから、最初にこのスピーカーを見たときは「これ使って大丈夫? フォーカルに訴えられない?」と思いましたが、訴えられていないところをみると、どうやら特許は取っていないか、ブラムの誰かが持っているかなんでしょうね。
振動板の材質等、こまかい記述は資料にはありませんが、見た目ではカーボンファイバーの編み込みかと思います。中央にはフェイズプラグが設けられ、いかにもパワフルな造りです。またペアリングを徹底しているのも重要。いくら同じに造っていても個体差は生じるもので、左右のスピーカーの場合、いくら高性能なユニットでも、左右の特性が少しでも違っていれば、出てくる音も最高の状態にはなり得ません。そこで、完成したユニットを測定し、同じ特性のものを左右で組み合わせるペアリングは、地味な作業ですがものすごく重要なんです。
こうして出荷されるブラムのスピーカー。マルティックス・マグネット以外は、スペック的にも素材的にも特に特徴的な部分はありませんが、出てくる音はものすごく魅力的。とくにボーカルが気持ちよく、生々しく聴こえます。このスピーカーはまだ試聴できていませんが、ギー氏が試聴を繰り返して納得したスピーカーだから、同じ傾向の音かと思います。このような、音を聴いただけで人の顔が見えてくるような熱を感じるオーディオ、いいですよね。