オートサウンドWebグランプリが発表されました。ゴールドアワードに輝いたのは、フルモデルチェンジしたカロッツェリアのサイバーナビ、AVIC-CQ910-DCです。なぜこのモデルが選ばれたのかを、試聴や試乗を含めて考えていきましょう。
まずオートサウンドWebグランプリに選ばれるには「音が良い」という前提があります。これは試聴で確認しています。昨年のサイバーナビもS/Nが良く素晴らしい音でしたが、今年のモデルは、それに輪をかけてクリアさが増しています。聞くと、プリアウトのノイズフロアは-144dB。昨年のサイバーナビより8dBもノイズフロアが下がっています。
ノイズレベルは4分の1以下に下がっているんです。
これだけスペックが違うんですから、音を聴いても明らかに違います。とにかくクリーン。そして静か。スペック的にはカロッツェリアXを超えているんじゃないでしょうか。音のキレ、シャープさ、クリーンさは、カロッツェリアXを彷彿とさせるものがあります。ダイヤトーン・サウンド・ナビの登場以降、AVナビの音質は一気に上がった感がありますが、ついにここまで来たかという感じです。
なお、-8dBという数値は、プリアウトでの話。内蔵アンプでは-4dB止まりです。-4dBでもノイズレベルは半分以下に下がっているわけですから凄いのですが、新サイバーナビの良さを実感するなら、やはりプリアウトを使って外部アンプをつないだ時だと思います。
これは35,000円(税別)のリーズナブルな250W×2パワーアンプ、PRS-D800を接続して聴いた時に確認できました。昨年モデルも、同じように外部アンプ有り/無しで聴き比べしたんですが、その時は「内蔵アンプってわりといいね」という感想でした。ところが今回、外部アンプに変えたとたん、音が激変したんです。「PRS-D800って、こんなにいいアンプだったんだ」という感想です。
これはプリアウトのクオリティが大幅に高まって、接続したアンプの能力を引き出しやすくなったおかげでしょう。このようなリーズナブルなアンプでも、しっかりと能力を発揮するのですから、是非ともお好きなパワーアンプを接続して聴いてほしいものです。今回はプリアウトにバッファーアンプを追加しているそうです。
この音の良さがあった上で、僕が何より素晴らしいと感じたのは「もう車内に音源を持ち込まなくていい」という点です。すでにCDなどのパッケージメディアをクルマに持ち込む機会はめっきり減り、ほとんどUSBメモリーにハイレゾ音源を貯めて持ち込むということが増えている今、メディアを持ち運びすることさえ面倒になってきていますが(笑)、新サイバーナビならほとんどストリーミングでいけてしまうんです。
それがdocomo in Car Connectの最大の良さでしょう。車内がつなぎ放題、データ容量無制限のWi-Fiスポットになりますから、周辺の環境さえ整えておけば車内で様々なコンテンツが楽しめます。ハイレゾ音源を聴きたいなら、自宅にNASを整えて、その中にハイレゾ音源を貯めておけばいいんです。もちろんUSBメモリーの音源を記録して持ち込んでもいいのですが、それさえ面倒に思えるほどの使い勝手の良さです。
また自宅のBDレコーダーと接続してHDDに記録した番組を楽しむこともできます。日本人はTVが好きなので、車内で好きな番組を好きな時間に見られるのはうれしいんじゃないですかね。もちろんYouTubeも楽しむことができるし、新サイバーナビのHDMI端子にFireTVスティックを差し込んでおけば、数々の動画配信サービスを楽しむこともできます。これだけ映像コンテンツが充実していると、車内にいる時間が伸びそうですね(笑)。
Amazon Music HDだって楽しめます。ただし、Amazon Music HDはFire TVスティックを経由して聴くので再生時に制限がかかって、たとえ192kHz/24bitの音源だとしてもそのままのクオリティで楽しむことはできません。そのあたりはちょっと残念ですが、同じ曲をSpotifyと聴き比べてみると断然にクオリティが高く、じっくり聴きこむわけではないなら十分なクオリティで楽しめます。このあたりはマスターサウンドリバイブという、CDや圧縮音源をハイレゾ化してマスター音源に近づける技術が効いているのかもしれません。
いずれにしても、映像にしろ音楽にしろこれだけコンテンツが充実していれば、もうクルマにメディアを持ち込まなくても良し。ついに車内でもストリーミングの時代が現実になったという時点で、画期的な商品だと思います。僕が新サイバーナビを入手したら、すぐにサイバーナビに対応するNASを手に入れてハイレゾ音源を貯めておくでしょう。そうすることで、車内にメディアを持ち込まなくても簡単に車内でハイレゾ再生ができるのですから。ちなみに通信が途切れることがないかを、担当者や各地の営業まで巻き込んで全国を走り回ったそうですが、ほとんど途切れることがなかったそうなのでご安心を。
カーナビ部分にも触れておきます。基本的にカーナビ部分は従来モデルを踏襲。メニューの変更やハードキーを無くした関係で多少、操作感は変わっていますが、機能に大きな違いはありません。試乗したヴェルファイアはMAユニットも加えたフル装備仕様で、借りた時には実写映像でナビゲートするスカウタービューのモードになっていました。
僕はこの画像が嫌いなので(笑)というか、この画像時に道を間違えることが多々あり、一般的な交差点拡大図に切り替えようと思いましたが、その手順がどうも以前よりも深い階層にあるような気がして、切り替えに手間取ることがありました。また実際の画像で道路状況を見せてくれるスポットウォッチャーも、実際の走行中に瞬時に場所を確定するのは不可能だし、かすかに自車位置マークが見えているとはいえ地図を隠してしまう悪影響が大きいため、正直いって無駄な機能と感じてしまいます。
このようなオーバークオリティな機能も多々ありますが、やはりカーナビとしては一級品。サイバーナビを使ったあとに他社のナビを使ってみると「えっ? 機能ってこれだけ??」と、物足りなさを感じてしまいます。それほど、飛び抜けて機能が多いのがサイバーナビです。
細かいところでいうと、スーパールート探索。カーナビでルート走行をしていると「実際にはもう一つ先の出口で降りたほうが早いのになぁ…」と思うことが多々あります。それでも「カーナビだからしょうがない」と思うでしょう。ところがスーパールート探索はサーバーの高性能なコンピューターで計算しますから、より早く着くルートを導き出してくれます。だから多少距離が伸びて遠回りするルートになっても、所要時間が短ければOK。こんな計算ができるのはスーパールート探索だけなんです。
スマートループ渋滞情報のおかげで、走行中の渋滞考慮オートリルートもバンバン行います。これが出た時に他社のナビなら新ルートと旧ルートを見比べてどちらを走るか検討するところですが、サイバーナビなら迷わず新ルートに切り替えます。というのは、これまでサイバーナビを使ってみて実感した経験からくるもの。ルートに関しては、ほんとうに信頼できるし、渋滞情報もきめ細かく正確。このあたりは、スマホナビはともかく、他社のナビでも真似できるものではありません。
また本当に細かいことですが、コンビニのアイコンを見て、駐車場の有り/無しがわかるんです。地方だと、だいたいコンビニには広い駐車場がありますが都内だと駐車場がないコンビニも多々あり、せっかくコンビニがあるのに路駐しなければならないこともあります。駐車場の有り/無しが事前にわかると動きに無駄が出ないので、ドライバーの立場に立った本当にありがたい表示だと思います。
ともあれ昨年末に会社が投資ファンドの傘下に入り、この先どうなるか心配されたパイオニアでしたが、その心配をよそに攻めた素晴らしい製品を作り上げたあたりに拍手を送りたいと思います。