ようやく日の目を見る時がやってまいりました。カロッツェリアの新しいPRSシリーズ・スピーカーです。
実はこのスピーカーを試聴したのは2020年3月初旬のこと。新型コロナウイルスの影響でガラガラの東北新幹線に乗り、天童へ行ってきました。その頃は、まだ5月の連休明けに発表するスケジュールで動いていたのですが、その後の感染拡大によってパーツの入手が難しくなったりしたため、5月の発表は見送りになったんです。
CSTドライバーは以前も開発段階でお蔵入りしたことがあったため「もしや今回も…」とも思ったんですが、今回は発売が決定しました。スタッフの「出したい!」という思いが勝ったみたいです。めでたし。とともに、ホッとしています。
新しいPRSスピーカーは「PRS」を名乗っているものの、前作とはまったく違います。もちろん「Open&Smooth」というコンセプトは共通しているものの、今回はCSTドライバーという技術を投入しています。
このCSTドライバーは、ホームオーディオにも詳しい人ならご存知かと思いますが、もともとパイオニアのプロ用機器を開発していたTAD(テクニカル・オーディオ・デバイセズ)が培ってきた技術。振動板の素材は異なりますが、最上位スピーカーのReference Oneを始め多くのスピーカーに採用されているTADのコア技術です。
CSTとはコヒーレント・ソース・トランスデューサー の略。このコヒーレントという言葉がCTSドライバーの大きなキモです。コヒーレントとは整合性とか論理的一貫性などを表す言葉で、複数の波の振幅と位相に一定の関係があることを意味しています。CSTドライバーの場合は、ミッドレンジとツィーターの位相が合っていて、両ユニットから出た音の波がきれいに揃っていることを表しています。
そういえばCSTドライバーがどんなものかを説明していませんでしたね。新PRSシリーズのTS-Z900PRSおよびCSTドライバーのTS-HX900PRSに採用されているCSTドライバーは7.3cmミッドレンジのセンターキャップにあたる部分にツィーターを配置したスタイルです。TS-Z900PRSは、このCSTドライバーに17cmウーファーとネットワークを組み合わせたもの。TS-HX900PRSはCSTドライバーとネットワークのセットです。
つまりCSTドライバーは1ボディ2ユニットの2ウェイシステム。TS-Z900PRSのように17cmウーファーが加わると、2ボディの3ウェイシステムになります。個人的には、3ウェイシステムは取り付けの手間がかかるしユニットが増えれば増えるほど調整も難しくなるので「クルマにフロント3ウェイは不要」と思っているのですが、これならでっかいツィーターとウーファーの2ユニットと思えばいいわけですから、OKですね(笑)。
ミッドレンジ&ツィーターが合体しているわけですから、広帯域をダッシュボード上などの高い位置で再生できます。これは、カーオーディオにとってすごく有利。CSTドライバー単体の再生周波数特性は173Hz〜90kHzなのでほぼフルレンジの広帯域再生がダッシュボード上で可能です。
しかも構造上、ミッドレンジとツィーターの位相ズレが生じない作り。このあたりは一般的な同軸2ウェイと違っていて音の到達時間にズレがない、本当の点音源を実現しています。これがCSTドライバーのキモとなる部分です。
価格はTS-Z900PRSが128,000円(税別)でTS-HX900PRSは78,000円(税別)。発売開始は9月を予定しています。もう、多くの人は使い切ってしまったでしょうが、単体のTS-HX900PRSなら、特別定額給付金でお釣りがくる金額です。そろそろ、販売店には新PRSシリーズのカタログも届いているはずなので、まずはカタログを見て音を妄想しましょう。僕は試聴済みなので、近いうちにレビューをお届けします。