クルマで試聴。カロッツェリア新PRSスピーカー

 今回はカロッツェリア新型PRSシリーズの車載状態での試聴です。実は3月に天童へ行った時もクルマはあったそうなんですが、装着直後で音がまとまっておらず、聴かせられる状態じゃなかったようなんですね。そのため天童では試聴できず。今回、デモカーを東京に運ぶ機会があって、ようやく試聴できたわけです。だからデモカーは山形ナンバー(笑)。まだ新型コロナウイルスが蔓延っている時期に遠出は大丈夫か!? は無しでお願いします(笑)

デモカーは山形ナンバーのハリアー


その影響もあって、クルマを運んできた東北パイオニアのスタッフは、戻ったあとに2週間の隔離を余儀なくされたとか。しかもクルマを置いて新幹線で帰ったので、今度は山形に戻すのも大変。同じく、2週間の隔離が必要ですからね。外部の人間なら隔離は不要なので、僕が蕎麦を食べに行きがてら運ぼうか? とも考えています(笑)

そんな余談はさておき、デモカーの試聴です。クルマは旧型のハリアー。フロントスピーカーにTS-Z900PRSを使い、ヘッドユニットは通称サイバーXのAVIC-CZ902XSを使用しています。システムは以上。パワーアンプはサイバーXの内蔵アンプを使用。サブウーファーも無しのシンプルな構成です。

CSTドライバーはAピラーに設置


4ch分の内蔵アンプは、CSTドライバーとウーファーに振り分けて使っています。つまり、CSTドライバーのツィーターとミッドレンジの帯域分割には付属のクロスオーバーネットワークを使い、ミッドレンジ(CSTドライバー)〜ウーファー間のクロスオーバーはサイバーXで設定しています。これで、4chアンプでも3ウェイシステムの構築ができるわけですね。

メインユニットはサイバーXです


そのCSTドライバー〜ウーファー間のクロスオーバーですが、CSTドライバーのローカットは800Hzに設定。ウーファーのハイパスは630Hzに設定しています。少し間が離れた設定ですね。このあたりはクルマや装着具合によって変わると思います。スロープは両方とも-18dB/octの設定です。

ウーファーはドアにトレードイン


あとは、運転席に近い右側のCSTドライバーのレベルを-5dBほど落としているくらい。イコライザーはフラットで何もいじっていません。男前(?)な設定です(笑)。さっそく手持ちのUSBメモリーを差し込んでハイレゾ音源を聴いてみます。

まず最初に驚いたのは、違和感がまったくないこと。カーオーディオの場合、スピーカー・ユニットの取り付け場所が限定されるため、どこかに位相のズレからくる違和感があって、それが良くも悪くも「カーオーディオの音」になっているんですが、それがまったく無いんです。とにかくスムースで自然。これが一番最初に驚いたところです。

2ウェイ1ユニット構成で位相が完全に一致


そして音場のリアルさにも驚きます。これまでの音場が良くできたクルマは何台も聴いてきましたが、やはりどこかに人工的な匂いを感じてきました。それは視聴位置から左右のスピーカーまでの距離が異なる状態で、タイムアライメントを駆使して作っているわけだからしょうがない部分ではありますが、TS-Z900PRSの場合はほんとうに自然なんです。人工的な匂いはまったく無し。このあたりは、点音源を突き詰めた効果なんでしょう。

おもしろいことがもうひとつ。タイムアライメントを運転席に設定した状態で助手席に座って音を聴く機会があったんですね。そんな状態でも、普通に音楽が聴けます。もちろん音像は左側によるし、運転席で聴いた時のような音場感は出るわけはないんですが、タイムアライメントを運転席に合わせた状態で助手席で聴いた時の気持ち悪さが無いんです。



今回は付属クロスオーバーを使用


あと、録音時に位相がズレている音が、はっきりわかるんですね。これも面白かったです。古いアナログの録音をハイレゾに変えた音源を聴いた時に気付いたんですが、キーボードの音だけが音場の外側から聴こえてくるんです。で「あっ、これは位相がちょっと変だな」と。

そういえば、数年前になにかのコンテストの曲で「あれっ? この曲、位相が変じゃない?」と思ったことを思い出しました。その時は、わりと曖昧なクルマが多くて、素晴らしい出来のクルマほど、この曲を聴くと「?」と思ったものですが、新PRSスピーカーだと、位相のズレがバレバレでしたね(笑)

このようにミッドレンジとツィーターの位相ズレが発生しない構造だと、カーオーディオにおいてはものすごくメリットが大きいようです。加えて幅広い帯域をダッシュボードよりも高い位置で、点音源で再生できることのメリット。これは、とてつもなく大きいですね。

今回のデモカーの場合は、800Hz以上をAピラーに装着したCSTドライバーで再生しているわけですが、CSTドライバーの再生能力を見ると173Hz〜90kHzなので、調整次第でもっと低い周波数から再生することも可能です。と書くと、ギリギリまで低くしてしまう人もいて、多くの場合歪みが増えてダメダメになることが多いのですが(笑)音を聴きながら適切なクロスオーバーを探ってほしいものです。

このように幅広い周波数をダッシュボードよりも高い場所で1カ所から出せるから、リアルな音場感が生まれるのでしょう。その自然さは、これまでカーオーディオでは聴いた記憶がありません。という意味では、画期的なユニットといえるでしょう。

幅広い帯域で位相があったいるからか、情報量もたっぷり。鮮度の高い音がリアルな音場を伴って鳴り響くので、クルマの中で聴いていることを一瞬忘れてしまうほどです。ドアのウーファーも再生帯域の負担が少なくなったおかげか、ヌケよく自然に鳴ってくれます。個人的には、サブウーファーが欲しいなぁという感じですが、ベースの音程もクリアに出ていて、これもなかなか車内では聴いたことがない感覚でした。

気になるのはサイズ感ですが、思っていたよりはコンパクトです。これより外径が大きなツィーターもありますから、でっかいツィーターだと思えばアリなサイズです。オーディオ好きなら大丈夫でしょう。個人的には、スピーカーが目立つのが嫌いなので、Aピラーに埋め込むのは気が引けますが、これならいっそのこと付属のブラケットう使って、堂々とダッシュボード上に置くのもありかな? と思っています。あるいはダッシュボードに目立たないように埋め込んだ場合はどうなんだろうと気になるところです。

という意味では、自作派にも使いやすいスピーカーと言えるでしょう。CSTドライバーはダッシュボードの上に置けばいいだけだし、ウーファーはカスタムフィットなので装着も楽です。これで良い音に変わるのだから簡単です。最も腕のある自作派の人なら、CSTドライバーを埋め込んだり、ウーファーも凝った取り付けをしちゃうんでしょうけど。

いずれにしても、これまでのカーオーディオを大きく変える可能性があるエポックメイクな製品であることは間違いないと確信しています。嘘だと思うなら、まずは自分の耳で確認してみることをお勧めします。