インポーター・ブースも残り1社になりました。インポーターの最後を飾るのは佐藤商事。長い間、ディナウディオを扱ってきた会社ですが、今回のデモカーはベンチャーオーディオのスピーカーを装着していました。
ベンチャーオーディオはあまり馴染みがないと思いますが、1986年に設立されたベルギーのブランドです。当初、主にスピーカー設計を行っていたんですが、2001年からスピーカーユニットの自社開発を行い、ホーム用とカー用のスピーカーをリリースしたそうです。今はシンガポールにもサテライトオフィスを設け、アジアや世界各地に製品を供給しています。
ベンチャーオーディオの特徴はツィーターがワイドレンジなこと。デモカーに装着されていたDD-2SR(158,000円/税別)は再生周波数帯域が90Hzから30kHzまでとかなり広い再生帯域を持ちます。ということはフロント2ウェイで良いのねと思いがちですが、今回のデモカーは、さらにムンドルフのスーパーツィーター、AMT21CM2.1-C(130.000円/税別)を追加し、13cmミッドバスのDD-5(180,000円/税別)を組み合わせた変則的なフロント3ウェイ構成です。加えて約23cm(9インチ)というカーオーディオには特殊なサイズのサブウーファーもあり、計4ウェイのシステムです。
その音はひと言でいうと濃密。情報量がたっぷりあって太いサウンドがクルマの中に充満しています。今回の組み合わせだと、ツィーターの振動板がマニラ麻とグラファイトを練り合わせたAGC、ミッドバスとサブウーファーがカーボングラファイトのCFGCという具合に、素材が異なっているんですが、帯域による音色の違和感はなし。高域から低域まで自然な音色が楽しめます。
すべてのスピーカー・ユニットにグリルガードが固定されているのも特徴。だからインナーバッフルを使って純正風に仕上げるのは難しいと思います。そのかわり、グリルがしっかりと固定されているから、振動でグリルが音を発するようなことはありません。このあたりは、メーカー側の良心ともいえます。スピーカーは固定強度が重要なので、これは重要なポイントです。
フレームはアルミニウムとマグネシウムの合金。すべてのスピーカーは100時間のストレステストを行った後、厳密なペアマッチングをとって左右を組み合わせられます。同じスピーカーでも特性はひとつひとつ微妙に異なるもの。左右のスピーカーがまったく同じ特性を持っているのがステレオ再生において重要ですが、これがなかなか難しいのです。そこでペアマッチ。完成したユニットを一つ一つ測定して、特性が近いものを組み合わせていくと理想に近いステレオ再生ができると言うわけで、この作業に力を入れているわけです。
濃密で上々の情報量を持ちながらレスポンスも良いもの。この速くて重い音は、個人的にもけっこう好みです。まだまだマイナーなブランドではありますが、魅力的なスピーカーであることは間違いありません。