振動で音を鳴らす自動運転時代のサウンド・システム

昨日に続き、今日もフォルシア・クラリオンのテック・ショーをお伝えします。1階の実装室には「3D-Pure Sound Surface System」を搭載したデモカーの試聴を行なっていました。

この3D-Pure Sound Surface Systemはエキサイターを使って内装材を振動させることで音を出すシステムです。エキサイターはフロントのドアミラー裏とリアのCピラー近くにセットされ、ほかに音像を定位させるためのセンタースピーカーとしてルームミラーあたりにもひとつ仕込まれています。また、サブウーファーとしてリアのガラスを振動させて低音を出すものも、リアトレイあたりに仕込んでいます。


開発したエキサイターは2種類。ひとつは振動体単体のもの、もうひとつはツィーターの裏に振動体を仕込んだものです。今回は、フロントとリアにツィーターと合体したものを仕込み、サブウーファー代わりのものに振動体単体のものを仕込んだそうです。センタースピーカー用は聞きそびれました。すみません。

このメリットは、小型化と軽量化です。サブウーファーなんかは、20cmユニットを使ったボックスと比べると、50分の1とか70分の1の体積とも言われています。このサイズの違いは、とくにクルマが自動運転の時代に入ると大きいと思います。

たとえば、新型マツダ3なんかは、本来、ドアの下にあるはずのウーファーがキックパネルのほうに移動しました。BMWなども、ドアにあるのは8cmミッドレンジのみ。ウーファーはシート下ですよね。これは、自動運転車になると、ドアの形状も含めて内装が大きく変わると言われているのに対応したものとも考えられています。

自動運転車だとシートが回転してフルフラットになったり、様々なことが考えられますが、その際問題になるのは回転するためのスペース。それを生み出すために、ドアとシートはスペースの取り合いになるわけですが、今、スピーカーがあるドア下部は間違いなく邪魔になるわけです。そんな時代が来ることを見越して、今のうちにドア下部にスピーカーがないオーディオ設計を考えようというわけです。

それでもカスタムオーディオの余地を残さなければいけないという思いから、ドア上部の純正ミッドレンジの位置には、フルデジタル・サウンド(FDS)の8cmミッドレンジを仕込んでいます。エキサイターのみのサウンドと、エキサイター+FDSのサウンドを聴き比べられる設計なので、違いが一聴でわかります。

それでは聴いてみましょう。まずはエキサイターのみのサウンドから。Hi-Fiサウンドという観点で見てしまうと、声が痩せてるとか低音が歪みっぽいなど不満はさまざま出てきますが、純正オーディオとして考えると、わりとまとまった音だし迫力もあるし、これはこれで十分かなと思ってしまいます。内装材を振動させて出しているとは思えないクリアなサウンドです。エキサイターの音とは考えなくても、純正システムとしてはハイレベルなサウンドです。

これがエキサイター+FDSに切り替えると、声がはっきりとするし、ゆとりが出るし、肉声感も高まります。やはりミッドレンジがあると全然違う、という印象です。ステレオ感も一段と広がり立体的になる感じです。低音は変わらないはずですが、心なしか締まった印象。これは、ミッドレンジがある程度低い音までカバーできているということでしょうか。サブウーファー代わりのエキサイターだけを鳴らして聴いてみると、けっこう音が暴れて歪みも感じるんですが、全体を鳴らして音楽を聴くとそんなに気にならなくなるので、これはこれで有りでしょう。

来たる自動運転時代のカーオーディオを先取りするという意味でもエキサイターの活用は有利。内装材やシートの分野では世界ナンバーワンのシェアを持つフォルシアと組んだことで、響きやすく歪まない内装材等の素材を共同で開発できるというメリットも生まれるでしょう。今後の開発には大いに期待したいしたいものです。