エタニ電機のETANI ONEが凄い理由

11月29日に名古屋の近く、あま市のコルトレーンでエタニ電機とのコラボ・イベントが行われました。そこで気づいたETANI ONEというDSP+デジタルプレーヤーの凄さをお伝えします。

このモデルは、亡くなった前社長からも何度も説明を受けていて、だいたいのことは知っていたつもりだったんですね。実際、音を聴いても調整後だと情報量が増えるし音場の臨場感も高まるし、なにより聴き心地の良い音になって、クオリティが一段と上がります。これはすごいなぁと思っていたんです。


でも前社長は感覚的に話すかただったので、細かい部分までは謎のところがあったんですね(笑)。それが今回、新社長の鈴木さんが丁寧に説明してくれたので、細かいところまで良くわかったわけです。これは凄いぞ、と。鈴木さんは元パイオニアでスピーカーの企画や開発に携わっていたかたで、現在のカロッツェリア・スピーカーの共通コンセプトである「オープン&スムース」の生みの親。前PRSスピーカーにも大きく関わっていて、スピーカーのブロなんです。

そこで今回詳しく知ったのは、ひとつのスピーカーでも周波数によって位相が変わるということです。ホーム用スピーカーならエンクロージャーに入った完成品なので、出てくる音もそれで完成とお思いでしょう。が、スピーカー・ユニットの構造的な問題で周波数によって位相が変化するんだそうです。例えば100Hzは0度だけど500Hzは90度、1000Hzは180度という具合。すべて0度の状態で再生できるのが位相が回っていなくて理想的なんですが、そうはいかないんですね。

ETANI ONEはスピーカーの実測データに基づいて補正データを作り、すべての周波数で位相が整った状態に直してくれます。これがWave EQの凄いところ。今回はホーム用のディナウディオのスピーカーで、補正前と補正後を聴き比べたのですが、音はぜんぜん変わります。もちろん、補正前でもディナウディオらしい良音なんですが、補正後の音は分解能が格段に高まって、細かい音が良く聴こえます。また、音像の立体感が増して、ヴォーカルと楽器の前後の関係などもはっきりと聴き取れるんです。

さらに、音が柔らかく感じて聴き心地が良くなります。位相が整ったことで、ギスギス感じるような耳障りな音が無くなったんでしょう。ずっと聴いていたい気分になります。今回用意したデモカーでは異常なほど試聴時間が長いお客さんが多かったんですが、たぶんクルマのなかでもそんな気分だったんだと思われます。

この調整にかかる時間は7〜8分ほど。最大4ウェイ・システムの調整ができます。ユーザー側が行うのは、最初のクロスオーバーの設定だけ。あとは待っているだけで測定と補正データの作成、確認を繰り返して整った音に仕上げていくわけです。

最初にクロスオーバーの設定をしますが、あとから設定値の変更も可能。だから最初のクロスオーバー設定がある程度適当でも、あとから直せるわけです。ただし、スピーカーを壊してしまうような極端な設定値は駄目だし、あとから設定し直せば多少は位相がずれてくるので、大きく設定値を変えた場合には最初から測定をやり直したほうが良いかと思います。

パラメトリックEQや定位する位置を補正するパラメーターも搭載しているので、ユーザーの好みに応じて調整したり、ショップ独自のサウンドに変えたりすることも可能。このあたりはインストーラーの腕の見せどころと言えるでしょう。位相を整えたあとに調整すれば、少しの調整で音がリニアに変わっていくのが感じられるので、セッティングもやりやすいと思います。

内蔵のデジタル・プレーヤーはラズパイ。USBを実質3基備えているので大容量のSSDなども接続可能です。もちろんハイレゾ音源の再生も可能。選曲などの操作はWi-Fiで接続したiPadなどでできるので選曲等の操作は手軽です。

車載機を初めて手がけたメーカーだけにサイズ(とくに高さ)は一般的な車載機を無視しているし、価格も価格なのでなかなか取り付けるのには勇気が要りますが、Wave EQはこれまでホームオーディオにもなかった考えかたで、確実にサウンド・クオリティが高まります。バナーに「ホームオーディオを超える音を車内に」といった意味の文言が書かれていましたが、あながち嘘ではありません。それはディナウディオのホーム用スピーカーを使ったデモでも証明されています。

もう少し安かったらいいのになぁという人は多いだろうし、実際に質問コーナーでも同様の問いが出ました。しかし前社長がまさに命がけで作り上げた製品だけに、まずはこの商品の認知度を広げていくことに集中するようです。

高いなぁと思っている人も、音を聴けばきっと凄いと思うこと間違いなし。聴く機会が少ないのが難点ですが、ショップからの依頼があればどこにでも出かけてセミナーを行うそうなので、聴いてみたい人はショップにリクエストしてみるといいでしょう。ある程度人数が集まりそうなら、セミナーを開いてくれると思います。その時は、僕も一緒に行けるといいなぁと思っています(笑)